仕訳の具体例1(現金による買い物)

さて、今回からは、簿記のつけ方の具体例を見てみましょう。

 


Pounds Payment / .v1ctor Casale.

 

その前に、もうひとつだけ、簿記の用語を覚えてください。

仕訳をする

仕訳(「仕分け」ではなく「仕訳」です)とは、

お金のやり取りを、先ほど説明した貸方と借方に分けて書くこと

です。いままで「簿記をつける」とちょっと大雑把な表現を使っていましたが、

これからは「仕訳をする」と言い換えます。

「簿記をつける」という言葉はいくつかの行為を指していて、

その中のひとつが「仕訳をする」なのです。

 

というわけで、簿記のつけ方の具体例、改め、仕訳の具体例を見てみます。

 

買い物をした時の仕訳

家計簿をつけるのでしたら、その7割方は買い物の内容になると思います。

130円の缶ジュースを現金で支払った買い物は、以下のようになります。 

 

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
缶ジュース 130円 現金 130円

 

このやり取りでは、

受け取ったもの→缶ジュース

手放したもの→現金

ですから、仕訳はこのようになります。

 

ここではわかりやすく「缶ジュース」って書いてしまいましたが、

缶ジュースは勘定科目としてはあまりふさわしくありません。

ここで「缶ジュース」と書いてしまうと、

別の日に「ペットボトルのジュース」と買ったときに

別の勘定科目で書く必要があるからです。

 

ここは同じ「食費」でまとめてしまうのが無難でしょう。

すると、この買い物は以下のように書き直せます。

 

 

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
食費 130円 現金 130円
缶ジュース  

仕訳にはメモを書き込むことが認められているので、

このように次の行に「缶ジュース」と書いています。

 

もうひとつだけ。

これは家計簿をつけるだけであればどちらでもいいのですが、

簿記の正式な記法では、勘定科目は()でくくる決まりになっています。

この決まりに従うと、こうなります。

 

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
(食費) 130円 (現金) 130円
缶ジュース  

 

次回は、クレジットカードによる買い物を説明します。

次回:仕訳の具体例2(クレジットカードによる買い物)

複式簿記のつけ方(借方と貸方)

今回はようやく、複式簿記のつけ方を説明いたします。

 

借方と貸方

先の説明で、複式簿記は「勘定科目と金額」の列が2列ある

と表現しましたが、この2つの列にはそれぞれ名前があります。

 

左側が「借方」、右側が「貸方」です。

これは簿記の専門用語であり、覚えるしかありません。

簿記で家計簿をつけるという目的からすれば、名前はどうでもいいのですが、

このブログで説明する上では、どうしてもある程度簿記の専門用語が必要なので、

覚えていただくようお願いいたします。

 

覚え方はいろいろあるのですが、一番メジャーなのはひらがなのものでしょうか。

  • 「かりかた」の「り」は左に払って終わるので左側
  • 「かしかた」の「し」は右に払って終わるので右側

というものです。

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私もこれでどっちがどっちというのを覚えています。

 

実は、私は簿記の勉強の過程でもう一つ、覚え方を考案しました。

多分にもうどこかで他の人が考えていると思うので、

私のオリジナル、とはならないと思いますけど、

 

  • 右手で渡し、左手で受け取る

 

これだけです。

 

後で説明いたしますが、「借方」「貸方」というのは文字通り

  • 「借りた方」
  • 「貸した方」

なのですが、一般的な「借り」「貸し」の意味を拡張して、

  • 価値あるものを受け取る→「借り」
  • 価値あるものを手放す→「貸し」

と解釈した方が理解しやすくなります。

 

そこで、これは右利きの人限定かもしれませんが、

もし両手で受け渡しを同時に行う場合、

渡すという行為は右手で

受け取るという行為は左手で

というパターンが多いと思い、先の

右手で渡し、左手で受け取る

という覚え方を思いつきました。

 

いずれにせよ、覚え方はどれでもいいのですが、

以下の2点は覚えておいてください。

  • 左が「借方」で、右が「貸方」
  • 「借り」には「受け取り」、「貸し」には「引き渡し」の意味がある

 

次回は、複式簿記の具体例なつけ方を紹介します。

次回:仕訳の具体例1(現金による買い物)

 

追記:

やはり「右手で渡し、左手で受け取る」の考えは既に発明されていますね。

簿記3級の僕が凄腕会計コンサルタントと呼ばれるワケ:第4号 「貸借一致の原則」とか、

仕訳方法をマスターする【起業・簿記.com】とか。

複式簿記のメリット2(記録ミスを見つけやすくすることができる、財務状況を評価することができる)

前回は、複式簿記のメリットを2つ紹介しました。

 

今回は、3つ目、4つ目のメリットを紹介します。

 

記録ミスを見つけやすくすることができる

 


Balancing The Account By Hand / kenteegardin

 

複式簿記は、実はあらゆる場面で記録ミスを見つけられるようになっています。

勘定科目と金額を、1つのやり取りにつき2列に記録するため、

原則的には両方の列に、同じ数字を書くことになります。

 

もし2列に記録する理由が、

支払い方法を記録するためだけであれば、

勘定科目を2つ書いて、金額は1つでいいはずです。

 

これを、わざわざ金額も2つ書くのは、

記録を整理するときに記録ミスを見つけやすくするためです。

 

詳細は後々お話しいたしますが、

この2列に書いた2つの金額は、整理するタイミングで、

それぞれバラバラに集計されます。

そして、それぞれの集計結果を、また一つにまとめるのです。

 

この時に、もしもそれぞれの集計結果に差があると、

どこかで集計を間違ったことになります。

多くの場合は、集計途中に見落としや

重複して計算してしまったことが原因です。

 

このようなミスは、単式簿記で記録していたのでは

中々見つけることはできません。

手元の現金や、商品の在庫など、実物があるものであれば、

実際にそれと比較して間違いを発見し、修正することができますが、

すべての場合でそのようなことができるとは限りません。

 

そのような意味で、複式簿記は間違いを発見しやすいと同時に、

悪意を持ってわざと間違えることも難しい記録方法なのです。

 

言い換えれば、会社の売上げを多く見せたり、会社の借金を少なく見せたり

するといった、財務状況を誤魔化しをするのが難しい、

信頼性の高い記録をすることができるのが、複式簿記のメリットです。

 


"Tax Cheat" / Sasha Y. Kimel

 

財務状況を評価することができる

会社の簿記の記録を利用すると、

その会社がどのような財務状況かを把握することができます。

また、その結果を用いて、

その会社の財務状況がいいのか悪いのか、評価することができます。

 

単純に、どれくらい売上があったか、どれくらい儲けることができたかの他に、

手持ちのお金に対してどれだけ利益を上げることができたか、

などの商売の効率性や、

どれくらい借金をして商売をしているか、

などの会社のリスク等、決められた指標によって評価することができます。

 

このあたりはまた別途まとめますが、

一方で、家計の評価方法はそれほど確立していないというのが

私の思うところです。

せいぜい「エンゲル係数」くらいしか思いつきません。

 

そこで、会社の財務状況評価に用いられている指標を

転用することで、家計の評価を行うことができるのです。

 

もちろん、すべての指標が使えるとは思えません。

家計評価には適さない指標もあるでしょう。

そこは、運用しながら考えていくのが良いと思います。

 

以上のように、複式簿記には多くのメリットがあります。

 

次回は、複式簿記のつけ方に必要な最低限の用語「借方」と「貸方」を説明します。

複式簿記のつけ方(借方と貸方)

 

複式簿記のメリット1(「なにで支払ったか」「いつ支払ったか」を記録できる)

複式簿記を用いて簿記をつけることは、

単式簿記と比べて以下の4つのメリットがあります。

  1. 「なにで支払ったか」を記録できる
  2. 「いつ支払ったか」を記録できる
  3. 記録ミスを見つけやすくすることができる
  4. 財務状況を評価することができる

 

ひとつずつ、その詳細を見てみましょう。

 

「なにで支払ったか」を記録できる

単式簿記では、「食費」「交通費」「書籍」のように、

「何に支払ったか」しか記録できない。

 

お小遣い帳をつけている小学生の生活であれば、

支払い方法は「現金」くらいしかないですから、

わざわざ「なにで支払ったか」を記録する必要はないでしょう。

 

しかし、社会人となれば、「現金」以外の方法で支払いをすることもあります。

例えば、電車に乗るときは、Suica等の交通系ICカードを使うことがあるでしょう。

また、インターネットで書籍を買うときに、

クレジットカードで支払うこともあるでしょう。

 


Credit Cards / Sean MacEntee

 

これは、最終的には現金で支払っていますが、

商品やサービスをやり取りするときには現金のやり取りは行っていません。

 

このような時、複式簿記であれば、

「現金で支払い」の代わりに、

Suicaで支払い」「クレカで支払い」

と記録することができます。

 

別に、最終的には現金で支払っているのだから、

商品やサービスをやり取りした時に「現金で支払い」したことに

してしまえばいいではないかという話もあるでしょう。

 

これについては、キャッシュフローについて

別途お話しする必要があると思いますが、

結論から言えば、より正しく財務状況を把握するためには、

より実態に合わせた記録をしないといけないので、

正確に支払い方法まで記録する方が好ましいです。

 

「いつ支払ったか」を記録できる

これも、先ほどと同じ話です。

 

「現金で支払い」したことにしてしまっては、

その時に現金で支払ったのか、

後で現金を支払ったのか、

先に現金を支払ったのか、

その区別をすることができません。

 

会社の運営にとって、時間差というのは大変重要です。

今、手元に100万円あるのか、

1か月後に100万円手に入るのか、

1月前に100万円があったのか、

この区別は会社の存亡にかかわることがあります。

 


Time & Money / Delwin Steven Campbell

 

特に会社の規模によっては、

先月の売上げ金を使って、今月の仕入れをしたり、

従業員に給料を支払ったりしていることもあるのです。

 

来月確実にお金が入ってくることが分かっていても、

今月お金がなければ、会社は潰れてしまうかも知れないのです。

 

これと比べれば、家計でこのような「自転車操業」をしていることは

そうそうないと思いますから、そういう意味では

時間差を記録するメリットは少ないかもしれません。

 

しかし、時間差を無視して家計簿をつけると、

その時間差があるということをいちいち覚えていないと

いけないという負担があります。

※これについては記事を改めてお話しします。

 

次回は、残り2つのメリットについてお話しします。

次回:複式簿記のメリット2(記録ミスを見つけやすくすることができる、財務状況を評価することができる)

簿記とは?

簿記とは、

元々は商人が、商品の仕入れから販売までを行う際の

お金の流れの管理をするために発明された記録のつけ方で、

今では、会社運営に伴うお金の管理に利用されています。

 

皆様も、小学生のころに「お小遣い帳」みたいなものを

つけたことがあるかもしれませんが、目的としては

簿記をつけることもお小遣い帳をつけることも同じです。

 

しかし一般的には、簿記とお小遣い帳とでは

記録の方法が異なります。

具体的に言うと、

・お小遣い帳:単式簿記

・(一般に言う)簿記:複式簿記

という形式で記録するのが一般的です。

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単式簿記

実は簿記の記法には大きく分けて2種類あります。

お小遣い帳や、一般的な家計簿帳は

単式簿記という記法で書かれることが多いです。

 

単式簿記であっても、複式簿記であっても、

書く内容としては主に2つで、

・お金を何に使ったか(or何によって得たか)

・その金額はいくらか

です。

簿記の用語ではそれぞれを、

「勘定科目」「金額」と呼びます。

 

例えば、

缶ジュース 130円

と書いた場合は、

勘定科目:缶ジュース

金額:130円

となりますね。

 

この「勘定科目と金額のセット」の列を1列使って書く簿記を

単式簿記と呼びます。

 

複式簿記

では、複式簿記とはどのようなものでしょうか。

先ほどの単式簿記の説明と対応付けて表現すれば、

「勘定科目と金額のセット」の列を2列使って書く簿記を

複式簿記と呼びます。

 

2列も使って何を書けばいいのか、という疑問がわきます。

缶ジュース:130円の他に、何も書くものはないではないか

という、至極もっともな疑問があると思います。

 

複式簿記で買い物を記録する際には、

・何を買ったか

の他に

・何で買ったか

を記すのです。

 


Now This is One Small Coke! / BrentDPayne

 

先ほどの缶ジュースの例で言えば、

例えばこれを、お財布にあった現金で買ったのであれば、

缶ジュース 130円 現金 130円

と書きます。

 

現金で買い物するのは当たり前じゃないか、

と思うかもしれません。

本当にそうでしょうか。

 

次回は、複式簿記のメリットを書いていきます。 

 

次回:複式簿記のメリット1(「なにで支払ったか」「いつ支払ったか」を記録できる)

家計簿を簿記でつけよう

家計簿を簿記でつけることにしました。

 


Numbers And Finance / kenteegardin

 

今まで私は、Web上の家計簿サービスを利用して家計簿をつけていたのですが、

思うとこあって、

・紙ベースで

・簿記の形式で

家計簿をつけることにしました。

 

なぜ家計簿を簿記でつけるのか

なぜ家計簿を簿記でつけようと思ったのか。

それは、簿記を利用することで、

家計をしっかり管理することができると

思ったからです。

 

簿記とは、会社を運営していくうえで必要な

お金の管理を体系的に行うシステムです。

一般的な会社であれば、経理を担当している人が

会社のお金の管理を簿記を使って行っています。

 


Accounting / 401(K) 2013

 

当たり前ですが、会社におけるお金の管理の大切さは、

一般家庭のそれと比べると、重みが全く違います。

扱うお金の額、頻度、やり取りする相手の数、

すべてにおいて桁違いです。

 

そしてもう一つ、会社と一般家庭で大きく異なるのは、

税金の支払いと、それに伴う法的責任です。

 

平たく言ってしまえば、

会社からお給料をもらっている人が

家計を支えている家庭にかかる税金は、

特別なイベントがある時を除いて、

すべて会社が代わりに支払っています。

 

ですから、そのような家庭の場合は、

改まって税務署に足を運んで

「今年分の税金を納めに来ました」

なんてすることはありません。

 

しかし、会社はそうはいきません。

会社は会社にかかる税金を自分たちで

払いに行かなければいけませんし、

それ以外にも、従業員の分の税金も

別途管理しなければならないのです。

(これは自営業を生業としている家庭の場合も同様です)

 


Personal Income Taxes Ver3 / StockMonkeys.com

 

そして、この管理に失敗してしまうと、

税務署から怒られてしまいます。

 

悪意がない間違いであれば、「間違えました」と言って

修正すれば済むことがほとんどですが、

悪意があると判断されたり、余りにも間違った額が大きい場合、

会社の場合はニュースで報道される可能性があります。

「○○株式会社 脱税の疑い」

というニュースが会社に与えるダメージは決して軽微ではありません。

 

ですから、会社は家庭と比べて

よりしっかりとしたお金の管理をしているのです。

 

そんな会社が使っているのが簿記というシステムです。

これを家計管理に使えば、きっと素晴らしい管理ができるに違いない。

そう思って、家計簿を簿記でつけようと思った次第です。

 

 

次回は、そもそも簿記とは?という話をしようと思います。

 

次回:簿記とは?