仕訳の具体例8(給料の天引き)

給料の銀行振り込みについては、以前扱っています。

(参考:仕訳の具体例4(給与の銀行振込み)

今回は、多くのサラリーマンの給料で行われている天引きについて書きます。

 


Exchange Money Conversion to Foreign Currency / epSos.de

 

そもそも天引きを記録する必要があるのか

天引きとは、労働の対価である給料から、税金や各種保険料を事前に差し引くことであり、

一般に、天引き前の給料額を「額面」、天引き後の給料額を「手取り」ということは

皆さんご存知の通りです。

 

恐らく多くのご家庭では、余り額面には興味がなくて、

もっぱら手取りしか記録していない、という状態だと思いますが、

個人的には、天引きされているものもしっかり管理する必要があると考えます。

 

何故かといえば、天引きの金額は決して我々の生活と無関係なものではないからです。

言い換えると、天引きされているものの中には、

自分たちの行動次第では調整が可能で、結果として手取りを増やすことができるものもあるからです。

 


2012 Tib Fib Ankle Fracture 8485 / tedeytan

 

例えば、

会社の保健組合が運営している医療保険や災害保険は、

どこかのタイミングで自分たちで内容を決めているはずです。

これらの任意保険の保険料の天引きは、自分たちの意思で天引きしているわけで、

決して「どうにもならないもの」ではありません。

 

任意保険は定期的に見直しを行い、その額を調整する必要があります。

そのためには、毎月の天引き額をしっかり管理する必要があるのです。

 

もちろん、自分たちの意思ではどうにもならないものもあります。

強制加入保険である、健康保険、厚生年金保険、雇用保険や、

所得税地方税などの各種税金は、

労働状態や扶養家族の条件などから、勝手に計算されて、

毎月の給料から天引きされています。

 

しかし、これも記録することによって、

自分たちの給料から何が支払われているのか、

間接的に、自分たちが国や地方自治体に何を支払っているのかを

意識することができるのです。

これは、単に政治に興味を持つという話以上に、

扶養者と被扶養者の関係に改めて着目するチャンスだと私は考えています。

 


super dad / automationtx

 

強制加入保険は、支払っているのは扶養者ですが、

保健の対象となっているのは扶養者と被扶養者の両方です。

つまり、家族の分の保険料を、天引きによって支払っているわけです。

 

家族のみんなが(保険がない場合と比べて)安く医療サービスを受けられるのも、

配偶者(夫・妻)が被扶養者である場合に、その人の分の年金がもらえるもの、

扶養者が転退職により一時的に収入源が途絶えた場合に雇用保険金がもらえるのも、

すべて、この天引きされたお金のお蔭なのです。

 

そういう意味でも、決して天引きを無視せず、

給与明細をしっかり仕訳に記録するべきだと考えます。

 

次回は、具体的な給与明細の仕訳かたを説明します。

仕訳の具体例7(見越し)

前回は繰延べを扱いましたが、今回は見越しを説明いたします。

 


home red / nikcname

 

見越し

繰延べが「本来、未来に行うべき支払いを前倒しでしてしまった時の処理」なのに対し、

見越しは「本来、過去に行うべき支払いを先送りにしてしまった時の処理」です。

 

「翌月分の家賃を今月のうちに払ってしまった」というのを、

「ちゃんと翌月分は翌月に払ったことにする処理」が繰延べなら、

「先月分の家賃を今月に支払うことになってしまった」というのを、

「ちゃんと先月分のは先月に払ったことにする処理」が見越しです。

 

来月に払うことを「見越して」、今月払ったことにしてしまう、というわけです。

 

言葉で説明するのも遠回りなので、仕訳を見てしまいましょう。

 

  借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
4 30 (家賃) 30000円 (未払家賃) 30000円
    4月分を次月から見越し
5 1 (未払家賃) 30000円 (普通預金) 30000円
    4月分を〇〇銀行口座から引き落とし

 

 これによって、4月分の家賃は4月内に払ったことにでき、

実際に銀行口座から引き落とされたのは5月

というやり取りを記録することができました。

 

繰延べ・見越しの使い方

このように、繰延べ・見越しは、

「取引が行われるべき時期」と「実際に取引が行われた時期」が

ずれた時に、使うことができます。

この「取引が行われるべき時期」というのは、記入する人が判断するのですが、

例えば、「〇〇月分」というのが実際に「〇〇月」に支払われなかった

(前払したのか、支払いを遅延したのか)というケースです。

お小遣いの前借りも、家計からしたら前払いになります。

 

次回は、給料の天引きを扱います。

次回:仕訳の具体例8(給料の天引き)

仕訳の具体例6(繰延べ)

前回の記事で、サービスを利用したタイミングと、

費用が銀行から引き落とされるタイミングが異なるときに、

それを一致させる手段として

「繰延べ」と「見越し」というものがあるということを説明しました。

 

これについて、もう少し定義を明確にしてみましょう。

 


Justice Close, Leamington Spa 2 / lydia_shiningbrightly

 

「繰延べ」

簿記をつける目的として、

家計を管理するという点があります。

その一環として、月々の収支を記録し把握するという目的があります。

 

例えば、毎月1日にその月分の家賃を払っているとしましょう。

 

 

  借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
4 1 (家賃) 30000円 (普通預金) 30000円
    4月分を〇〇銀行口座から引き落とし

 

これが例えば、5月分を4月末日に支払ったとします。

 

  借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
4 30 (家賃) 30000円 (普通預金) 30000円
    5月分を〇〇銀行口座から引き落とし

 

このまま4月分の仕訳をまとめてしまうと、

4月に2か月分の家賃を払っていることになってしまい、

逆に5月には家賃を払っていないことになってしまいます。

 

もしこれを調整したい、となったら

簿記の手段として「繰延べ」という方法があります。

 

これは、要約すると

  • 4月末日に支払った家賃を一旦前払扱いにする
  • 5月初日にその前払い分を家賃で相殺する

という方法です。

 

仕訳で書けば、以下のようになります。

 

  借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
4 30 (前払家賃) 30000円 (普通預金) 30000円
    5月分を〇〇銀行口座から引き落とし
5 1 (家賃) 30000円 (前払家賃) 30000円
    5月分を前月から繰延べ

  

これで、銀行口座からの引き落としは4月に、

家賃の支払いは5月に記録されることになります。

 

次回は、もう一方の「見越し」を説明します。

次回:仕訳の具体例7(見越し)

仕訳の具体例5(定期的な銀行口座の引き落とし)

日常的な買い物は、買い物をした瞬間に決済が行われ、

現金を渡したり、カードを使用したりするのですが、

電気代やガス代、家賃など、

指定した銀行口座から定期的に引き落とされているものについては、

ちょっとした運用の工夫がいると思います。

 


Statement / matsuyuki

 

知らないうちに支払いしている項目

このような、毎日の利用料を月一程度で一括で引き落とされるものについては、

厳密に仕訳をしようとすると大変です。

 

何しろ、銀行口座から引き落とされた日に、

簿記に記入する必要があるからです。

 

毎日毎日銀行に通帳記入しに行くのも大変ですし、

ネットバンキングに毎日アクセスして確認するのも大変です。

 

そこで、このような、月に1回程度、銀行から引き落とされる項目については、

もう少しゆるく扱うことをお勧めします。

 

具体的には、

月末に通帳記入して、追記されている項目を仕訳する

というのが最も簡単だと思います。

 

これならば、毎日毎日口座の残高を気にする必要はありません。

私は今のところ、この方法で運用しています。

 

請求のタイミングと引き落としのタイミング

定期的な引き落としのものは、多くの場合、当月利用分ではありません。

先月分だったり、先々月分だったりするのが普通です。

 

もし、仕訳を月ごとに整理している場合は、

サービスを利用した月と、その料金が引き落とされる月が異なることになります。

 

これをどう扱うかは個人で決めればいいと思います。

私は、引き落とされた月の仕訳として処理してしまっていますが、

それは何よりも楽だからです。

 

もしこれをきちっとやりたいのであれば、方法はなくはありません。

簿記上の手段として、「繰延べ」と「見越し」というものがあります。

 

次回は、この「繰延べ」と「見越し」について説明します。

次回:仕訳の具体例6(繰延べ)

仕訳の具体例4(給与の銀行振込み)

今回は、給与の銀行振込みについてご説明します。

 


American Money / 401(K) 2013

 

収入の書き方

ここまでの説明では、買い物における支出についての仕訳の方法を紹介してきましたが、

今回は収入の仕訳方法を説明します。

 

と言っても、今までの知識を踏まえれば何にも難しくありません。

 

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
(普通預金) 30000円 (給与) 30000円
〇〇銀行口座に給与振込み

 

 「右手で渡し、左手で受け取る」の基本を覚えていれば大丈夫でしょう。

貸方の「給与」という勘定科目も、

「給与を受け取る権利」

と考えれば、その権利を行使して手放す代わりに、現金を受け取ると解釈できます。

 

今回は銀行振込みを例にしたので借方の勘定科目は「普通預金」となっていますが、

現金手渡しなのであれば「現金」と書いてもOKです。

 

銀行口座の勘定科目

ところで、ここまでの記事では銀行口座への振込み、引き落としを仕訳するとき、

勘定科目として「普通預金」を使って来ましたが、

これは、会社同士でお金をやり取りするときに使用する当座預金口座の

勘定科目である「当座預金」に倣っているものです。

 

実際に家計簿で使用する際は、

  • 「銀行口座」
  • 「〇〇銀行口座」
  • 「〇〇銀行××名義口座」

など、自由に書いてください。

 

次回は、定期的な銀行引き落としについて説明いたします。

次回:仕訳の具体例5(定期的な銀行口座の引き落とし)

仕訳の具体例3(プリペイドカードによる買い物)

 さて、プリペイドカードによる買い物の場合です。

 


Prepaid Cards / 22n

 

プリペイドカード(前払い)の場合

先にカードに現金をチャージし、そのカードを使う場合や、

先に現金でカードを購入して、そのカードのポイントと交換で商品を買う場合がそうです。

Suicaなどの交通系ICカードや、iTuneカードなどがそれに相当します。

ここではこれらのカード類をまとめてプリペイドカードと呼んでいます。

 

プリペイドカードによる支払いも、クレジットカードによる支払いと同様に

2つのやり取りから成り立っています。

  1. 先に現金を支払い
  2. 後で商品を手に入れる

もちろん、仕訳も2行分必要です。

 

こちらも結論から先に示すと、以下のような仕訳になります。

 

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
(前払金) 154円 (現金) 154円
Suicaに現金でチャージ
(交通費) 154円 (前払金) 154円
東京~上野をSuicaで支払い

 

今度は「前払金」という言葉が出てきましたが、

これは説明不要ですね。

 

改めて簿記の用語として定義するなら、

「現金の支払いと同じ効果を行使できる権利」

とでも言いましょうか。

 

1行目のやり取りで、現金と交換で手にしたものは、

「現金の支払いと同じ効果を行使できる権利」と考えます。

そして2行目では、その権利を手放す代わりに、

交通費というサービスを手に入れているわけです。

 

「〇〇費」「〇〇代」という勘定科目

ここで、ちょっと引っかかった人がいらっしゃるかもしれません。

「借方に書くのは受け取ったもののはずなのに、

 交通費を受け取るというのはおかしいのではないか?」

という疑問です。

 

実は交通費に限らず、「〇〇費」「〇〇代」などの勘定科目は

一般的なやり取りをしていると、すべて借方に書き込まれます。

 

これについては、色々な理解の方法があるのですが、

先に「受け取ったものが借方」と説明している状況では、

次のような理解が納得しやすいと思います。

 

それは、

「〇〇費」「〇〇代」などは「〇〇のサービスを受け取った」と読み替える

という理解です。

「交通費」という借方の勘定科目は、

「交通のサービスを受け取った」と考えるとすっきりします。

 

「交通費」の他、

「交際費」「電気代」「電話料金」なども同じように考えましょう。

 

そもそも「食費」だって同じ「〇〇費」なのですけど、

どうも交通費や電気代のように、形のないものの買い物だと

何だか腑に落ちないわけです。

 

次回は、給与の銀行振り込みについて説明します。

 次回:仕訳の具体例4(給与の銀行振込み)

仕訳の具体例2(クレジットカードによる買い物)

前回は、現金による買い物の仕訳を説明しましたが、

今回はクレジットカードによる買い物の仕訳を説明します。

 


Credit Cards and Cash / Sean MacEntee

 

クレジットカード(後払い)の場合

クレジットカードによる支払いは、

  1. 先に品物を受け取り
  2. 後で現金を払う

という2つのやり取りから成り立っています。

したがって、仕訳も2行分必要です。

 

結論から先に示すと、以下のような仕訳になります。

 

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
(趣味・娯楽) 130円 (買掛金) 130円
本をAカードで支払い
(買掛金) 130円 (普通預金) 130円
Aカード支払い分をB銀行口座で引き落とし

 

ここで「買掛金」という言葉が出てきましたが、

要は「後払い分のお金」ということです。

いわゆる「ツケ」に相当するものです。

 

本来は現金で払うところをツケにすることで、

現金を払うタイミングを未来にしているのです。

 

ということは、ツケで買い物した時は、

何も引き渡さずに、商品を受け取っているわけで、

貸方には書くものはないと考えるでしょう。

 

しかし、簿記の考え方では、ツケによる買い物をしたときは、

「決められた代金を後で請求できる権利を引き渡す」

と考えることにしています。

これに相当する勘定科目が「買掛金」です。

 

そして、実際に銀行口座からカード支払い分が引き落とされるときは、

「その権利を回収する代わりに、口座の残高を減らす処理をしている」

と考えることにしています。

 

ちなみに、ツケで商品を買った時の代金を買掛金で処理するのに対して、

ツケで商品を売った時の代金は「売掛金」と呼びます。

しかし、家計簿をつけている限りでは、

売掛金を仕訳に書き込む機会はまずないでしょう。

会社の場合は大いにあるはずです。

 

次回は、プリペイドカードによる買い物について説明します。

 次回:仕訳の具体例3(プリペイドカードによる買い物)